Cross Talk8

臨床から研究へ。
研究から臨床へ。
研究

MEMBER

  • 高江 正道 先生
    婦人科医長
  • 白石 絵莉子 先生
    産婦人科医
  • 中村 健太郎 先生
    産婦人科医

トップレベルの環境で研究に励む。

みなさんは、どういった関係になるのでしょうか?
高江

聖マリアンナにはいくつかの研究チームがあるんですけど、2人は私のチームでともに研究をしています。白石先生は他大学からの留学生として、中村先生は大学院生としてそれぞれのテーマで研究しています。

白石

研究を始めてからちょうど一年ぐらい経ちますね。中村先生は、どうして高江先生のチームに入ったの?

中村

そもそもは、生殖分野に興味があって、大学院では生殖分野を研究したいと思ったのがきっかけですね。生殖チームの中でたまたま最初に高江先生と話すようになって、高江先生のもとで研究することになりました。
高江先生と出会って、一緒に海外の学会やミーティングに参加させてもらって、マリアンナの生殖医療や研究が世界に通用するほど高いレベルだというのを、身をもって感じました。

高江

そう感じてもらえるとうれしいよ。マリアンナの教育体制の特徴として、若い学年から海外経験を含めていろいろな経験を早く積むところがあるけど、世界のなかで自分たちのレベルがどういう程度か知ってもらうのも目的の一つだからね。マリアンナの生殖医療は、日本全国はもちろん、海外から通院している患者さんもいらっしゃるし、多くの患者さんから頼りにされる病院だという事実は、非常にやりがいを感じるところだよね。

白石

マリアンナの産婦人科は患者さんだけでなく医療者からも注目される病院ですね。私のように、生殖医療を学ぶ目的で、他の大学病院から国内留学に来る人もいますし、国内だけでなく海外の他施設からドクターが学びに来ますしね。

高江チームが行なっている研究内容を教えてください。
中村

「妊孕性の温存」に関わる基礎研究に取り組んでいます。

高江

どういうものか簡単に説明すると、「妊孕性」というのは「お子さまを授かるためのチカラ」と思ってもらえるとわかりやすいですね。「温存」は言葉の通り「保存すること」を指すので、将来的に妊娠の可能性を失わないように生殖能力を残すことが「妊孕性の温存」です。

白石

妊孕性の温存に関する私たちの研究は、大きく分けて2つ。1つは、抗がん剤が生殖機能に与える影響を明らかにすること。もう1つは、凍結した卵巣を移植する際の有効な方法に関する研究です。

中村

抗がん剤の方は私と白石先生で担当しているんですが、やっと少し成果が見えはじめてきたところですね。最終結果が出るのはまだ時間がかかりそうですが。対して後者の研究は、高江先生がメインでやられていて、産科婦人科学会の表彰や海外でも表彰されるぐらいかなりの可能性を秘めた研究ですね。

高江

いくつかの賞を受賞できたことは非常に光栄なことだと思う。私たちが手がける生殖医療分野の基礎研究は、臨床に活かせるスピードが早いため、研究の成果が明日にでも患者さんを救う可能性につながる。それは、医師として非常に嬉しいことだよね。

世界初、光干渉断層計による
原始卵胞の可視化と標準画像の確立に成功。

卵巣の移植に関する研究について、詳しく聞かせてください。
高江

「原始卵胞の非侵襲的可視化」をテーマに研究を進めています。どういうものか説明すると、まず「原始卵胞」というのは簡単に言うと「卵子の素」だと思ってもらえるとわかりやすいと思います。つまり、妊娠に関わる非常に重要な細胞になります。

白石

原始卵胞というのは卵巣内に存在していて、どのくらいの原始卵胞が卵巣内にあるかを非侵襲的(ダメージがないように)に調べる方法は現在臨床で行われている方法の中では存在しません。

中村

侵襲的に、たとえばホルマリン漬けにして染色することで原始卵胞を可視化する方法はあります。でもそれだと評価した卵巣を再度、身体に移植することはできないんです。つまり、身体に移植する卵巣自体は、実際には評価していないものを戻すことになるので、そこが問題なんです。

高江

その問題を解決する方法として、私たちは卵胞の可視化に着目しました。そして、卵巣内のどこに原始卵胞が多く含まれるのかを、卵巣組織を破壊することなく確認できるようにすることに成功しました。先ほども申したように、原始卵胞というのは卵子の素になる細胞、つまり妊娠につながる細胞なので、この研究結果は卵巣移植の際に最適な卵巣組織を選択する助けになれると考えています。

白石

これにより妊娠する可能性が高まることは、それを望む患者さんの救いになれますよね。

高江

この研究は発展途上だけど一定の結果を出せたことは非常に嬉しいことですね。でも、卵巣移植を向上させる方法は他にもたくさんあります。卵巣の取り出し方、凍結・保存の方法、解凍の仕方、移植方法など、未知なる物事を研究によって解明することで、さらなる医療の発展に貢献できると良いですね。

先生たちは普段、研究だけをされているんですか?
中村

私は大学院生なので臨床は当直のみです。残りの時間は100%研究に費やしています。

白石

私は、週に2日が研究、週に2日が臨床、あとの1日は外勤です。まぁ、バランスよく…ですかね。

高江

バランスよくって大変だよね、時間がないときには遅くまで研究に時間を使ったりすることもあるよね。私は研究の他にも外来もやるし手術もやるし、あとは学生の講義もすれば、試験をつくったりも。わりと病院の中をあっちこっち動き回っていますよ。

挑め、未知なるものへ。

聖マリアンナの良いところはどんなところですか?
高江

生殖医療の研究でいえば、最適な設備が整っていることはもちろん、ドクターや研究者の技術力も必要なんです。マリアンナは生殖医療に関して臨床も研究も数々の実績を出しており、そのノウハウも下の世代へと継承しているため、学ぶ環境としては非常に整った施設だと思います。

中村

私が感じるのは、4つの専門分野(周産期・腫瘍・生殖・女性医学)の垣根がほとんど存在しないこと。たとえば、不妊治療を担当した患者さんが妊娠した際、その方のお産も自分が担当できるし、必要あれば帝王切開などの手術だって出来る。一連の流れに立ち会える、というのは聖マリアンナの特徴だと思います。ゆくゆくは自分の研究成果を臨床に応用して、患者さんのお産まで手伝うことができたらいいな、と思っています。

白石

他の大学病院だと専門分野によって自分が携われる領域が限定されていたりするからね。お産は産科の先生しか立ち会えない、とか。

高江

あとはマリアンナだからということでもないですが、「基礎研究」というのはまだ誰も知らないことを解明するためのもので、誰かがすでに明らかにしていることに同じように手を出しても意味がないんです。だから、まだ誰も手がけたことのないもの、知られてない領域にチャレンジして、何か結果を残せることこそが研究の醍醐味。それが直接、医療の発展につながるかどうかは別として、まだ世界が知らないことに挑戦できることは、非常に面白いですよ。

これから先、やりたいことや実現したいことはありますか?
白石

まずは、いま自分が携わっている研究をカタチにしたいですね。私は聖マリアンナに来る前、研究をしたことがなく、1から学んでいます。失敗も多く一進一退している状況ですが、とてもやりがいのあるテーマなので結果が残せたらと思います。あとは、高江先生に教えていただいたことを今後の研究や臨床にも活かしていきたいと思います。中村先生は?

中村

生殖医療でテッペン獲りたいですね。

白石

夢が壮大だね!(笑)

中村

いや、最初に話したこととカブるんですが、やっぱりマリアンナの生殖医療というのは世界的にみても最先端を進んでいると思うので、恵まれた環境で学びを深めて、いつか高江先生みたいにまだ誰も知らない新しい発見とか、医療界に貢献できることを夢みています。そして、世界のテッペンにいく!

高江

言ってくれるね〜(笑)。