Course4

講座|研究
聖マリアンナ発の研究が、
世界のスタンダードに
近づくことを夢見て。
杉下 陽堂YODO SUGISHITA
難病治療研究センター 講師

いつでもどこでも、誰にでもできる卵巣組織凍結技術を。

国内と海外への二度の留学、そして鈴木教授との出会いが、私の医師人生を大きく変えました。大阪の不妊治療専門のクリニックへ国内留学をしたのは入局から2年足らず。そこで生殖医療に関する臨床経験を積んだのち当院に戻り、数年間は早発卵巣不全の患者さんのための臨床に携わりました。転機になったのは、鈴木教授との出会い。鈴木教授に勧められ、がん患者の妊孕性温存療法の研究チームに参加させて頂くこととなり、卵巣の組織凍結方法を研究すること数年が経過した頃、ニューヨーク医科大学、Professor. Kutluk H.Oktay の教室への海外留学の機会を頂きました。アメリカ留学の目的は、我々が研究していた卵巣組織凍結法の有効性を探ることであり、いつでもどこでも、誰にでも簡便に卵巣組織凍結ができるようにしたいという想いから、私たちは世界のスタンダードとは異なる手法の開発を進めました。

日本がん・生殖医療研究会(現:学会)を立ち上げ、
学会をリードする存在へ。

大きな進展があったのは、2010年に大学の生命倫理委員会の許可を経てヒトの卵巣組織凍結を開始したことです。2013年には、妊娠・出産に至るケースが確認されました。その事実が世界的にも認知されたことで、当院の名前が広く知られるようになりました。現在では卵巣組織凍結方法の指導にあたるため、国内だけでなく海外からも声がかかり、年に数回世界各地に鈴木教授と共に訪れています。また、2012年には、鈴木教授が日本がん・生殖医療研究会を立ち上げ、その後正式な学会となりました。現時点で、がん患者が約100名卵巣組織凍結を当院で実施するなど、日本でトップクラスの実績を誇っています。他ではなかなか実施できない医療に触れることができるという意味でも魅力的だと思いますね。

研究者である前に、医師であるということ。

現在私は、難病治療研究センターに異動し、生殖領域の研究を継続しています。週に4〜5回外来診療に従事し、終わった後に研究をしていた生活から一転、今では多くの時間を研究にあて、外来は週一日半となりました。ただ、これから医師になる皆さんにお伝えしたいのは、まずは目の前の患者さんの治療に没頭して頂きたい、ということ。はじめから研究を行う必要はないと思います。むしろ、臨床にどっぷり浸かって、患者さんを助けることに集中した経験が、研究においても生かされると思います。何らかのかたちで患者さんに還元することができる研究ができればすばらしいと思うと共に、私たちは研究者である前に医師であるということを大切にしたいと考えています。