Course3

講座|生殖
わからない。難しい。
だから、生殖は面白い。
洞下 由記YUKI HORAGE
大学病院婦人科医長

探求しがいがある、未知の領域。

生殖の面白さにのめり込んだのは、入局して4年目。結果がはっきりしていて、知れば知るほど、発見がある。勉強すればするほど、奥が深い。こんな領域があったんだと驚きました。ちょうど社会的にも体外受精への関心が高まっていた時期。当時はまだ、体外受精が今ほど一般的ではなく、治療のことを周囲に相談できずに悩んでいる患者さんがたくさんいらっしゃいました。親友にも親にも治療のことを打ち明けられない。そんな孤独を抱える患者さんのためになりたくて、死ぬ気で勉強しました。不妊の原因はさまざまですが、検査をしても問題がない方も、全体の半数近くいらっしゃいます。つまり、そのくらい未知の領域が多い。逆にいうと、探求しがいがあるということ。生殖機能のメカニズムのどこが悪いのか、一つひとつ探っていく過程を楽しめる人には特に向いていると思います。

ゴールは一つじゃないということ。

当院にくる患者さんは、合併症があったり、難治性の不妊だったりと、一筋縄ではいかないケースが多いのが特徴です。一般のクリニックで成果が得られなかった患者さんが、最後に当院に来る。ここが最後の砦だ、という意識は全員にあると思います。難しいからこそ、不妊治療の末に授かったお子さんが当院で生まれると、喜びもひとしおです。「この子、卵の頃から知ってるわ」患者さんと苦労と喜びを分かち合っています。その一方で、子供を授からないまま卒業される方も、多くいらっしゃいます。不妊治療の難しさは、ゴールが一つじゃないということ。その方の人生、価値観に沿った医療を提供すること。仮に子供ができなくても、今後の人生を満足のいくものにすること。そのために、自分達にできるサポートは何かいつも考えています。

臨床し学びながら研究し、研究しながら臨床に生かす。

1978年に世界初の体外受精が成功してから40年、生殖領域においては次々に新しい知見が発表されてきました。そのくらい進歩が早く、臨床と研究が直結している分野。基礎生理学がある程度のレベルまでインプットされていないと、最先端の情報のキャッチアップはおろか、医師同士の普段の会話についていくのも精一杯です。知識を共有し臨床に生かして、全体のレベルアップを図る。私が働く生殖のチームは、多少マニアックなそんなチームです。後輩の皆さんにぜひアピールしたいのは、症例の多様さと、医師一人ひとりの姿勢。症例が多くても、流れ作業になる医師は一人もいません。一例一例、丁寧に学びながら最先端の研究ができるところ、その研究をすぐに臨床に活かせるところが、当院の最大の魅力だと思います。